ストーリー
物語の舞台は金沢。地元の大昭堂パンは、進出してきた全国チェーンの大型パン店に客を取られ売上げは日を追って落ちていた。この状態がもうしばらく続けば、店を手離すしかない。大昭堂パンを営む竹田夫婦の悩みは深刻だった。資本競争にはどのようにしても勝てないと絶望し、無気力になってゆく夫。妻の順子はなんとかしなければと、ひとり焦っていた。
そんな時、ある助言が彼女の心を捉える。それは「お客様の側に立った店」という言葉だった。"とにかくお客様においしいパンを食べていただこう"と決心した彼女は、早朝から幼い子供の啓一を車に乗せて配達に走りまわる。
商いの原点に帰ってがんばる彼女の心は、お客の心を捉え、次第に反響が出るようになってきた。
「時間に遅れた」「静かに配達してくれ」といった声もあったが、温かい気持ちで彼女を見守ってくれるお客が増え、パンを焼くチーフの八代たちも協力をおしまなかった。このまま続ければ、新しい道が開けそうな気配であり、彼女はさらに懸命の努力をするのだった。だが、そんなある日、また彼女をおそろしいショックが襲う。
夫が焦るあまりに株に手を出し、大失敗してしまったのだ。
〈カラー90分〉