てんびんの詩 第一部(原点編)

小学校の卒業祝いに父から贈られたのは鍋蓋だった。売ってこいと父はいう。
それができなければ、店を継がせることはできないと。
旅がはじまった。商いの魂を探す旅が……。

ストーリー

その日、主人公・近藤大作は小学校を卒業した。近江の大きな商家に生まれた彼は、何不自由なく育ち、今日の日を迎えていた。そんな彼に、父は祝いの言葉と共に一つの小さな包みを手渡す。中には鍋の蓋が入っていた。彼には意味がわからない。だが、その何の変哲もない鍋蓋が大作の将来を決めることになる。父はそれを売ってこいというのだ。売ってこなければ、跡継ぎにはできないという。

しかたなく、大作は鍋蓋を売りに歩く。まず店に出入りする人々に押し売りのようにしてすすめる。だが、そんな商いがうまくいくはずもない。道ゆく人に突然声をかけても、まったく見向きもされない。親を恨み、買わない人々を憎む大作。父が茶断ちをし、母が心で泣き、見守る人々が彼よりもつらい思いをしていることを彼は知らない。その旅は、近江商人の商いの魂を模索する旅だったのだ。

行商人のようにもみ手をし卑屈な商いをしても、乞食をまねて泣き落としをしても、誰も彼の鍋蓋を買うものはいない。いつしか大作の目には涙があふれていた。そんなある日、農家の井戸の洗い場に浮かんでいる鍋をぼんやりと見つめながら、疲れ切った頭で彼は考える。〈鍋蓋がなくなったら困るやろな。困ったら買うてくれるかもしれん〉。しかし、次の瞬間には〈この鍋蓋も誰かが難儀して売ったものかもしれん〉。無意識のうちに彼は鍋蓋を手に取り洗いはじめていた。不審に思った女は尋ねる、なぜ、そんなことをしているのかと。大作は、その場に手をついて謝る。

「堪忍して下さい。わし悪いやつです。売れんかったんやないんです。物を売る気持ちもできてなかったんです。」

女は彼の涙をぬぐいながら、その鍋蓋を売ってくれというのだった。

〈カラー90分〉

特典映像ー近江商人・近江商人の家訓・水の詩(音楽と映像のシンフォニー)

近江商人(13分) 制作著作(株)VIEW
近江は文化の回廊である。日本のほぼ中央に位置して古くから交通や商業の要衝であった。特に江戸時代以降、独自の商法を全国各地に展開した近江商人は、日本の近代的流通機構と経営原理を確立し、日本経済の発展に大きく貢献したことで知られています。ここでは、近江商人の発祥と活躍について紹介しています。
監修/近江商人研究家 故小倉栄一郎滋賀大学名誉教授
近江商人の家訓(10分) 制作著作(株)VIEW
近江商人は実に多くの家訓や店則を残しています。それらは全て近江商人が人として商人として生きる手引きとなるものでした。ここでは代表的な「三方よし」「利真於勤」「しまるしてきばる」「陰徳善事」「近江屋勘兵衛家に伝わる家訓」をわかりやすく紹介しています。
水の詩 ~音楽と映像のシンフォニー~ (9分) 作曲:矢吹紫帆
近畿1400万人のいのちを支えている琵琶湖。一滴の雫が集まって大海に流れていく様は母なる琵琶湖で育まれた近江商人が世界に羽ばたいていくのと何処か似ている。
NHK美の回廊をゆく 日本美再発見の作曲で有名な矢吹紫帆さんが琵琶湖をイメージして作曲したオリジナル曲。
てんびんの詩「原点編」の中の鍋蓋売り修行の話は、びわ湖放送番組近江風土記で「近江商人3部作」の取材中、近江商人研究家故江頭恒治滋賀大学名誉教授から鍋蓋売り少年の話を聞いて以来、長年温めて来た構想を実現に導いたのは(株)イエローハット創立者役鍵山秀三郎氏でした。鍵山氏は「てんびんの詩」3部作に全面協力していただきました。

【Disc2 特典映像】Serendipity in てんびんの詩 (関係者インタビュー収録映像)

セレンディピティとはセイロン(今のスリランカ)のお伽噺から出た言葉で思いがけないものを偶然発見する力として使われています。偶然の出来事が誰かにとって決定的な意味を持った時、人はそれを運命と呼ぶ。

川端五兵衛氏  かわばたごへい 1937年生(23分)
近江八幡市長(1998年~2006年)を2期務める
竹本幸之祐が滋賀県で取材活動を続ける中で出会った川端五兵衛氏は、当時、近江八幡の「まちづくり」に情熱を燃やす青年でした。共に語り、学びあった日々。そして立場や利害を離れたノーサイド精神での「まちづくり」の体験談を語っていただきます。
倉本初夫氏  くらもとはつお(19分)
株式会社 商業界 取締役主幹
日本経済進展の要となる商業界との出会いによって商人の生き様を学び、竹本幸之祐は大きな転機を迎えることとなりました。倉本初夫氏には「てんびんの詩」制作のきっかけとなった出来事から、商業界の精随である「商売十訓」「店は客のためにある」「これからの商売のありかた」「愛に生きる商いの道」などについてお話いただきます。
鍵山秀三郎氏  かぎやまひでさぶろう 1933年生(22分)
株式会社イエローハット 創立者 「日本を美しくする会」相談役
鍵山秀三郎氏と竹本幸之祐の出会いによって、いよいよ「てんびんの詩」が生まれることとなります。独自の掃除哲学を持つ鍵山秀三郎氏には、掃除を通して得られるものやその活動の意義をはじめ、商人として大切なことを熱く語っていただきました。掃除をする鍵山氏の姿はまさしく道を極めた人。無駄の無い動きに感動すら覚えます。
梅津明治郎氏  うめつめいじろう 1930年生(5分)
「てんびんの詩」第一部・第二部 監督
梅津明治郎と竹本幸之祐は、日本映像企画設立当時から共に歩んできた仲間。この二人の熱き思いが見事に重なって「てんびんの詩」は完成しました。
吉野隆三氏  よしのりゅうぞう 1971年生(3分)
「てんびんの詩」第一部 原点編 主人公
「てんびんの詩」第一部 原点編を制作するにあたり、多くのオーディションから選ばれた吉野隆三氏。作品の中では近藤大作の少年時代、大ちゃんになりきっています。
川端五兵衛、倉本初夫、鍵山秀三郎、梅津明治郎、吉野隆三 各氏と出会った順に構成されています。画面上では敬称は略しています。
てんびんの詩(2枚セット)
● 第一部 原点編 4カ国語(日本語・中国語・韓国語・英語)字幕入り
特典映像ー近江商人・近江商人の家訓・水の詩(音楽と映像のシンフォニー)
翻訳
英語・・・・近藤幸久
中国語・・・劉 揚帆
韓国語・・・舟見恵香
● Serendipity in てんびんの詩
購入はこちらから
この商品について問い合わせる
買い物を続ける
  • てんびんの詩(第一部 原点編)
  • てんびんの詩(第二部 自立編)
  • てんびんの詩(第三部 激動編)
  • にんげんだもの
  • 夫婦だもの
  • 制作者 竹本幸之助

日本映像企画